【マンション管理費 滞納3 禁じ手】専有部分の使用禁止はできるか?

専有部分の使用禁止はできない

管理費等を滞納することは、よく考えてみると、区分所有法第6条1項の建物の管理又は使用に関する「区分所有者の共同の利益に反する行為」であると見えます。したがって、区分所有法第58条1項により「滞納者の専有部分の使用を禁止できる」のではないかという考え方に至ることもできると思われるのであります。

 

現に、約10年間で約1189万円の管理費等の支払いを滞納していた事案において、大阪地判平成13年9月5日(判時1785号59ページ)は、上記の考え方を採用して、専有部分の使用禁止を認めたのであります。

 

ただし、その控訴審において、大阪高判平成14年5月16日(判夕1109号253ページ)は、原判決を破棄して、管理費等の滞納を理由として専有部分の使用禁止を求めることはできないと判示しました。

 

すなわち、「専有部分の使用を禁止することにより、当該区分所有者が滞納管理費等を支払うようになるという関係にあるわけではなく、他方、その区分所有者は管理費等の滞納という形で共同の利益に反する行為をしているに過ぎないのであるから、専有部分の使用を禁止しても、他の区分所有者に何らかの利益がもたらされるわけでもない。そうすると、管理費等の滞納と専有部分の使用禁止とは関連性がないことが明らかであって、管理費等を滞納する区分所有者に対し専有部分の使用禁止を認めることはできないと解するのが相当である。」と判断したのです。

したがって、現状では、いかに滞納管理費等の額が大きくても、滞納のみを理由として専有部分の使用禁止まで求めることは困難であると考えるべきであるということであります。

 

「共同の利益に反する行為」ではない?

まあ、法律は難しいです。1189万円滞納すれば、管理組合の修繕積立金に相当の影響を与えていると思います。それにより、回収できると思われるところも回収できないとか、他の区分所有者が、立替で修繕費を拠出しているかもしれないので、自分は他人の金で共用部分を使用することを享受できるのだが、義務は果たしていないわけなので、少々納得できない点もあると思えるのです。

 

仮に専有部分の使用禁止を管理費等の滞納で認めてしまうと、いったいどの程度滞納したら使用禁止ができるようになるのかのガイドラインを引かなければならないという、司法側の線引きがまたまた問題になるから、その辺を避けたのかなと思います。

 

そして、区分所有法の58条による「専有部分の使用禁止」の趣旨は、その専有部分の区分所有者が、他の区分所有者に対して多大なる迷惑行為をしており、これを差し止めるために行うことが主たる目的の法律です。例えば、マンション全体に響き渡るほどの大音量で楽器を弾きまくるとか、マンションの廊下とか階段とかを囲って私物を置くとか、要は、マンション全体の人に迷惑行為をする区分所有者に対する処分として、使用禁止があるのです。

 

まあ、その辺の趣旨からも管理費等の滞納はあまり迷惑じゃないという裁判所の判断なのでしょう。

 

まあ、残念ながら、管理費等を滞納したからといって、専有部分を使用禁止にはできないということなので、管理組合には残念なことかなと思います。

 

「共同の利益に反する行為」は、いつか別のブログで説明するかもしれません。待っていてください。

 

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